米津玄師

米津玄師「BOOTLEG」

投稿日:2017年11月8日 更新日:


米津玄師「BOOTLEG」(2017)

2017年11月1日発売の米津玄師のアルバム「BOOTLEG」のレビュー。

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感想

最初に一通り聴いて思ったのは「大人しいアルバムだな」と「菅田将暉のボーカルが期待以上に良い」の二つ。
大人しいと思ったのは、「orion」~「ナンバーナイン」までの一連の楽曲の印象が強いから。テンポがゆったりめで、バンドサウンドではなくエレクトロな音像がメインの曲が続いていく。
アルバムの個々の楽曲を見ていくと「ピースサイン」や「Nighthawks」のように、米津自身がルーツだと公言しているBUMP OF CHICKENやRADWIMPSを彷彿させるギターロックもあるし、ボカロ時代の雰囲気を感じる「砂の惑星」や「爱丽丝」のようなメロディが特徴的な曲もあるんだけど、全体を通して聴くと大人しいというか、優しいアルバムだなと感じる。

こう書くと「米津玄師も丸くなってしまったな・・・」と思われてしまうかもしれないし、実際にそんな感想をSNS上では目にした。
もし「丸くなった」の部分が攻撃的なサウンドが少なくなったという文脈で使われているのなら、理解できないことはない。
でも、彼の音楽に対する感性の部分で話をすると、丸くなるどころか、より鋭くなっているんじゃないかなと思ったり。

今作に関する雑誌等のインタビューを読んでいると、「過剰なオリジナル信仰」への嫌悪感を米津玄師は何度も口にしている。
実際に収録されている楽曲「Moonlight」でも下記のようなフレーズがある。

「どこへ行ってもアウトサイダー 夜通し読んだハンターハンター 本物なんて一つもない でも心地いい (Moonlight)」

ちなみにこの「Moonlight」という曲は今作で最後に制作された曲とのこと。アルバムの核になる曲だと個人的には思ってる。
彼自身の発言とこのフレーズ、さらに言えば今作を「BOOTLEG」=「海賊盤」と名付けたことから「米津、めっちゃストレスたまってんな」って思った。
お前の言う「本物」、「オリジナル」って何なんだよ、教えろよ。みたいな憤り。

究極的に「オリジナル」な音楽を作ろうとするなら、ノイズまみれな曲だとか、複雑怪奇なリズムパターンの曲とかで作ることは可能。
でも、そうやって出来上がった音楽が「美しいのか?」、あるいは「ずっと聴かれ続けられる音楽なのか?」という問いに対してはNOと答える人が多いはず。
米津がやりたい音楽は「普遍的なポップス」。前作「Bremen」からその傾向はどんどん強くなっている。

彼を天才だとか、奇才だとか呼ぶ人は多いけど、それは彼の楽曲から「圧倒的なオリジナリティー」を感じているからだと思う。
けど、彼の楽曲が持つ「オリジナリティー」は決して天から降ってくるものでなければ、湯水のようにあふれ出てくるのでもなく、彼の人生の中で聴いてきた過去の偉人の音楽や、本、映画、アニメといった様々な作品から影響を受けて、自分がやりたい音楽と結びつけた結果、生まれたもの。
今作でも、様々なジャンルをモチーフにした楽曲が並んでいるけど、どの曲も米津流のポップスに仕上がっているし、彼じゃないと作れない音楽が鳴らされている。
それは彼がモチーフに対して、「どこをどう切り取れば、自分の楽曲に活かせるか」ということを常に考えているからこそ出来るのだと思う。
音楽に対する好奇心の強さ、あるいは吸収力の高さ、言い換えるなら「音楽に対する反射神経」はどんどん鋭くなっているんじゃないかと今作を聴いて感じた。

また、今作で以前の作品と決定的に違うのは、米津以外の他者が作品に関わっていること。
菅田将暉、池田エライザがボーカルとして参加。「打上花火」も今作はセルフカバーしているが、元々はDAOKOとのデュエット曲。

他者の力を借りて今作は出来上がったわけだけど、人が他人に助けを借りるときってどんなときかと考えると、自分が困った時だと思う。
勝手な想像だけど、彼も困っていたんだと思う。なんとなく自分の音楽に限界を感じることがあったのかなんて思ったり。

歌も、絵も、ダンスだって出来る超人だと思ってたけど、彼も一人の人間だったんだ。
彼をすごく身近に感じた。今までの作品では感じなかったけど、今作を聴いてそう思った。
「砂の惑星」の歌詞じゃないけど。彼と友達になれそうだなんて思ったり。安い大衆居酒屋で酒を酌み交わしながら、2017年を代表するこのポップアルバムについて彼から講義を受けたい。

1.飛燕
2.LOSER


3.ピースサイン

4.砂の惑星 ( + 初音ミク)
5.orion

6.かいじゅうのマーチ
7.Moonlight
8.春雷

9.fogbound ( + 池田エライザ)
10.ナンバーナイン
11.爱丽丝
12.Nighthawks
13.打上花火
14.灰色と青 ( + 菅田将暉)

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著者:S.S
1990年生まれ。愛知県出身。

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特にロキノン系といわれるジャンルを好んで聴く。

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