The Cheserasera

The Cheserasera「dry blues」

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The Cheserasera「dry blues」(2017)
2014年メジャーデビューのスリーピースバンド。インディーズから発売される自身3枚目のフルアルバムの感想。

2017年夏。何気なく某動画サイトを眺めてたら、このバンドを見つけた。これぞスリーピースという勢いのある演奏に、どこか気怠い雰囲気。
好きなタイプのバンドだと思い、色々周辺情報を集めていると新しいアルバムを発売するとのこと。アルバム発売に関して、私の好きなMy Hair is Badやcinema staffからコメントが届いており、より一層彼らが気になる。
そして、手に取ったこのアルバム。一聴して、もっと早く彼らを知っておくべきだったと後悔してしまうぐらい良かった。

サウンド的には新しいことをやっているわけではない。00年代の邦楽ロックバンドを聴いて育ってきたんだなという印象を強く受ける。
ボーカルの宍戸翼は1989年生まれ、ということで私の同年代。もしかしたら、私が学生時代に聴いていたバンドを彼も同じ時期に聴いていたかもしれない。そう感じてしまうような親近感。
やはり自分はこの手のギターロックから逃れることは出来ないんだなと、このアルバムを聴いて確信してしまった。

ところで、このアルバムのテーマは「愛」。11曲のラブソングが並んでいる。
でも、「好き」とか「愛してる」とか直接的な言葉を彼らは使わない。ありきたりな言葉で表現できない「愛」。
「dry blues」、乾いてしまったとしても、より強まる熱情。
ありきたりなラブソングが嫌いな方に聴いてほしい一枚。

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楽曲の話

まず、冒頭の2曲。「I Hate Love Song」と「LOVELESS」でガツンとやられる。スリーピースバンドとしての強度を見せつける2曲。両曲とも勢いのあるロックンロールナンバー。
スリーピースらしく、ギターが主張するところはベースが控えめ。逆にギターが鳴っていないところではベースがしっかり存在感を出すという、音の隙間をしっかり埋めるアレンジ。
一方で、ドラムは主張が激しめ。様々なリズムパターンを叩き、積極的にフィルインを入れる。このドラムの存在が彼らの大きな強みになっているなと。

さらに、彼らのサウンドの特徴だと感じたのは、一発録りなのかなと思うような少しざらついた音像。ライブ感というのか、彼らが演奏してる場面がなんとなく想像できる音に仕上がってる。
そういうサウンドの印象からは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかBLANKEY JET CITYからの影響も受けているのかなと。いわゆるガレージロックというんだろうか。

3曲目「うたかたの日々」から、ラスト「good morning」に至るまで曲調は違えど、センチメンタルな楽曲が並んでいる。
どちらかというと、こういう切なさを表現するようなメロディの方が得意としているんだろうか。
特に個人的に気に入ったのは、どこかSyrup16gのミドルナンバーみたいな印象を受けた「フィーリングナイス」、キャッチーだけど寂しさも感じるメロディが癖になる「You Say No」、サビに向かって駆け上がるメロディが気持ちいい今作のリード曲「Blues Driver」。
他にも空間系のギターエフェクトが効果的に使われてる「心に抱いたまま」、アコギでしっとり歌い上げる「乱れた髪を結わえて」など切ない楽曲がずらり。

どの楽曲を聴いても感じるのは、ボーカル宍戸翼の声の存在感。
なんと言っても色気がある。冒頭にも記載した曲から感じる気怠い雰囲気というのは、彼の声によるもの。
「人生って、こんなもんでしょ」みたいな諦めというか、達観した感じが声から滲み出ている。

歌詞の話

今作のテーマは「愛」ということなんだけど、「ラブラブでハッピー!」みたいな頭がお花畑になっているような曲は一切無くて、過去の恋愛を基本的に冷静に、時に怒りを交えながら振り返っている曲が多い。

「不細工な身体とか頭の先まで 残さず君に愛されたならば ふざけたラブソングが胸を打つこともなかった (I Hate Love Song)」
「過ごした景色も失敗も全部 忘れないよって そんなことを思える様な日々だったんだ (春風に沿って)」
「伸びた君の頬の産毛の陰を思い出してる (Blues Driver)」

過去形で語られる数々の恋愛は、宍戸翼の実体験かフィクションかどうかは分からないけど、妙にリアリティがある。

今作の歌詞を聴いて良いなと思ったのは、こういう「終わった恋愛」をただただ歌うんじゃなくて、その恋愛もしっかり忘れないで思い出にしつつ今を懸命に生きているというのが伝わるところ。

「 「僕らは忘れる生き物だよ」分かるけど 愛した人の顔も忘れて どこへ行くの (カサブランカの花束) 」

このフレーズで、過去の恋愛からは逃れられないことを歌い上げる。

「あんなに愛した後で まっすぐ前だけ向いて シラフで生きていられる事の方が ドラマだったよ (I Hate Love Song)」
「人生はまだまだトゥービーコンティニュー (LOVELESS)」
「明日のドアを叩いてまた始めるよ かけがえない自分も愛せる日まで (good morning)」

そして、明日へ未来へ生きていることを歌い上げたフレーズ。
私たちが生きている世界は恋愛ドラマみたいに、主人公とヒロインがくっついて最終回じゃない。別れもあるし、新しい出会いもある。どんどん続いていく。
そんな続いていく毎日を過ごしている中で、ふと振り返ったときに思い出す過去の恋愛。当時は気付いていなかったとしても、そこには大きな「愛」が溢れていたのかもしれないし、その「愛」が現在の自分を形成しているのかもしれない。
「I Hate Love Song」、「LOVELESS」なんて言うのは裏返しで、「愛」がないと生きていけない人。
そんな人が作る曲に、私は惹かれたんだ。

愛が真っ赤とは限らない

この言葉はボーカル宍戸翼がこのアルバムに寄せたコメントの一文。赤い炎よりも青い炎の方が温度が高いのと同じで、一見冷めてしまっている物の方が実は燃え上がっているのかもしれない。
ちょっと気怠そうに聞こえる彼の声も、実は熱い内面を隠すためのものかもしれない。

何だか懐かしくなるような切なさもあり、人間らしい泥臭さもあるこのスリーピースバンド。
「最近の若いバンドは・・・」みたいな事を思っている人に聴いてほしい一枚。

1.I Hate Love Song


2.LOVELESS
3.うたかたの日々
4.心に抱いたまま
5.フィーリングナイス
6.You Say No
7.春風に沿って
8.Blues Driver

9.カサブランカの花束
10.乱れた髪を結わえて
11.good morning

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プロフィール

著者:S.S
1990年生まれ。愛知県出身。

邦楽アルバムの感想とコラム記事を中心に書き殴っていきます。
特にロキノン系といわれるジャンルを好んで聴く。

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