Syrup16g

Syrup16g「HELL-SEE」

投稿日:2014年8月18日 更新日:


Syrup16g「HELL-SEE」(2003)

~「日常」という名の「地獄」~

15曲で1500円という価格設定でも話題になった、メジャー3rdアルバム。(2010年にリマスタリング盤が再発)
ボーカルの五十嵐さんが好んで聴いていたという、イギリスのバンド「The Police」を意識したサウンドメイキング。
五十嵐さんの内面描写にマッチした、空虚なサウンド。良くも悪くもスカスカ。
淡々とした冷たさを感じる問題作。

ライブを意識した勢いのあるナンバー「イエロウ」

「スキルが無いから好きにしたい サカリがついたら逆恨み 心が無いから試みない 誤解が尽きたら後悔したい」

一曲目から、五十嵐さんお得意の言葉遊びが炸裂。
疾走感たっぷりのパンキッシュな一曲。

どうしようもなくダウナー。このアルバムを象徴する一曲「不眠症」

「のた打ち回って不眠症」

現代人に多いと言われている不眠症。そう、Syrup16gはリアルを歌うバンドなんです。
アルバムジャケットに描かれている羊ともリンクした歌詞。

不健康な感じがする、タイトルトラック「Hell-see」
不穏なアルペジオが鳴り響く。健康になれそうにない人が「健康になりたい」と歌う。

「抱き枕」というフレーズがやたら耳に残る「末期症状」

「寂しさをフリーマーケット セールスし過ぎるのが不快だ 危ない」

相変わらずの五十嵐節。寂しさを安売りしたって誰も買わない、寂しいけどね。

明るい曲調で、ロックスターの苦悩を歌う「ローラーメット」
ステージの上や、TVの前で輝いている姿しか、僕らは知らない。
それは虚像かもしれない。楽しめればそれでも構わないけど。

自虐的な歌詞が痛々しいポップソング「I’m劣性」

「バイトの面接で「君は暗いのか?」って 精一杯明るくしてるつもりですが」

これは実体験ですかね?
こういう場面では、確かに劣性かもしれないけど、曲を作ることに関しては間違いなく優性。

美しいメロディのミドルテンポナンバー「(This is not just)Song for me」

「昨日覚えたばかりの 歌を口ずさんで 家に帰る」

凄く幸せな歌詞。こういう日常もさらりと歌っちゃうのがセンスなんだろうなあ。

個人的にこのアルバムのベストソング「月になって」
なんて綺麗なメロディだろうか。夜に聴いたら最高の一曲。
そして、Syrup16gとしては珍しいラブソング。五十嵐さんのメロディメーカーとしての才能に驚かされる一曲。

このアルバムの中でも異色のポップナンバー「ex.人間」
とらえどころのない歌詞。明るめの曲調だが、不気味な一曲。

「美味しいお蕎麦屋さん 見つけたから 今度行こう」

ラストのこの歌詞で救われる。この曲は普通の人間の事を歌っていたのだと確認。

機械音がイントロに挿入されている、緊張感張り詰めた楽曲「正常」

「雑踏 その何割 いらない人だろう」

「正常」であっても必要とされない社会。「異常」ばかりが映し出されるテレビ。何が「普通」なのか。

淡々としたギターサウンドにエモ―ショナルなサビが特徴の「もったいない」
「もったいない」って言う感情は、物を持ってる人が抱く感情だと思う。
本当に持ってない人は「もったいない」何て感情抱く前に、使わざるを得ないのだから。

歪んだサウンドで突き進むギターロックナンバー「Everseen」
重めの楽曲が続いていたので、空気をリセットする役目を果たす。

丁寧に歌う五十嵐さんのボーカルが印象的な「シーツ」

「痛み堪えて 痛み殺した 次第に My body’s end この部屋で待つ」

おそらく入院中の人間を歌った歌詞。
「いつか」は叶わないことを知っていながらも、願い続ける。

軽快なサウンドと対照的な、病的な女性を描いた歌詞が目立つ「吐く血」

「「私には何もないから」 そう言って笑った そう言って笑った」

なぜ、このメロディにこの歌詞を乗せようと思ったんでしょうか?
この曲で歌われるような女性が周りに居たら、どう接すればいいんだろうか。

ラストにふさわしい、終わりを歌った「パレード」

「そこで歌ってよ 僕の為に歌ってよ パレードが終わったら 風に変わるんだ」

この曲が最後に歌われることで、希望の光が見える。
これからも彼らは歌い続ける。そう信じさせてくれるはずだった歌詞・・・。

Syrup16gのキャリアの中でも異色の作品。アルバム全体に漂う緊張感が凄まじい。
曲調としては明るめな曲もあるが、歌詞の重さとサウンドのスカスカさが救いようのない世界観を作り上げている。
アルバムタイトル通り、「地獄を見る」という感じ。ただ、ここで言う地獄は僕らが生きる「日常」のことだ。

このアルバムの歌詞はどの曲も暗めではあるが、日常的な風景を歌うフレーズが多い。
「不眠症」「I’m劣性」「ex.人間」などで歌われるのは、普通の人間の日常そのものだ。
こんな地獄のような日常を耐えながら生きている僕らは、とんでもなく「健康」なのかもしれない。

Syrup16gに興味を持っていただいたなら、ぜひ聴いていただきたい作品。
この独特の世界観は他のバンドでは味わうことができないと断言できる。
心に刺さる音楽を求めている人にオススメ。刺さりすぎて、抜けなくなる可能性もありますのでご注意を。

① イエロウ
② 不眠症
③ Hell-See
④ 末期症状
⑤ ローラーメット
⑥ I’m 劣性
⑦ (This is not just)Song for me
⑧ 月になって
⑨ ex.人間
⑩ 正常


⑪ もったいない
⑫ Everseen
⑬ シーツ
⑭ 吐く血

⑮ パレード

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プロフィール

著者:S.S
1990年生まれ。愛知県出身。

邦楽アルバムの感想とコラム記事を中心に書き殴っていきます。
特にロキノン系といわれるジャンルを好んで聴く。

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