Syrup16g「COPY」(2001)
感想
2008年に解散した3ピースバンド Syrup16g のインディーズ時代のフルアルバム。
僕の音楽人生に大きな影響を与えたバンドの一つで、解散した今でも好んで良く聴いている。(2014年再結成!)
彼らと言えば暗いとかネガティブという印象が強いけど、本質はかなりポップなバンド。
そんな彼らの最初のフルアルバム。名盤です。
①は淡々と始まり、気だるそうな五十嵐隆のボーカルが乗ってくる。
歌詞は言葉数が少ない。基本的に「She was beautiful」を繰り返すだけ。
新人バンドにしては達観しすぎている。
②は激しめのギターストロークから始まる一曲。
冒頭の歌詞が、
本気出してないままで終了です
「無効の日」
忘れずに言っておきますが、このアルバムは彼らの1stフルアルバムです。
その部屋の窓から見えるのは
すべてはもう
無効の日「無効の日」
確かに暗い歌詞ですが、まだ序の口。
③はギターロックバンドとしてのポテンシャルが垣間見える彼らの代表曲。
疾走感あるサウンドとは反対に、心に突き刺さる歌詞が連発される。
君に言いたいことはあるか
そしてその根拠とは何だ「生活」
というフレーズから始まり、
涙ながしてりゃ悲しいか
心なんて一生不安さ「生活」
と続く、僕がおかしいわけではない。みんな心に不安を抱えているんだと安心する。
次のフレーズも強烈、
君に存在価値はあるか
そしてその根拠とは何だ「生活」
この問いにを即答できる人間になりたい。
ライブではグダグダになるギターソロも音源では格好いい。
④は彼らのポップな一面が垣間見える曲。
⑤は不穏なギターストロークで始まる。
何といってもサビの、
君は死んだ方がいい
「デイパス」
というフレーズのインパクト。君とは言っているが、自分に対して言っているように思う。
⑥はファンの間で人気のある曲。
もしも僕が犬に
生まれたなら
それでもう負け「負け犬」
というフレーズから始まり、言葉数の少ないサビが印象的。
また国家予算内で死ぬの
「負け犬」
どうしたらこんな歌詞が書けるんだろう。
⑦は世界を変えることはできないと歌う。
広い普通の心をくれないか
「(I can’t)change the world」
普通の心ってどんな心なのか。五十嵐隆の内面をえぐった歌詞が刺さる。
⑧はこのアルバム最速のナンバー。言葉遊びが光る。
⑨は比較的軽快なサウンドの楽曲。
多分楽したいのです
これからもしたいのです
誰よりもしたいのです
惜しみなくしたいのです「パッチワーク」
どんだけ楽したいんだよと思わずツッコミをで入れたくなる。
⑩はこのアルバムのラストナンバーでミドルテンポの落ち着いた楽曲。
土曜日なんて来るわけない
「土曜日」
土曜日って一週間の中で最も安らげる曜日だと思うんだけど。
土曜日が来なかったら、死んでしまうかもしれない。そう考えると、凄い曲だなこれ。
ミドルテンポの曲が多く、早い楽曲は③と⑧ぐらい。それもあり、③の名曲っぷりが強調されている。
Syrup16gというバンドは、ボーカル五十嵐隆のネガティブだが、現実を真正面で受け止めた歌詞に特徴がある。
暗い歌詞を妙に癖になる声で歌い、これまた妙に耳に残るポップなサウンドで鳴らすのがSyrup16gである。
おそらく拒絶する人もいると思うが、聴き手の精神状態とマッチすれば一生もののバンドになる。
少なくとも僕は一生聴き続けるし、彼らの復活を心から望んでいる。
Syrup16gの最高傑作は次作の「coup d’Etat」だと思っているけど、このアルバムも全く劣らない。
このアルバムはSyrup16gがどんなバンドか知るのには最適な一枚。
最後に五十嵐さんに一言、
こんなにオリジナリティにあふれたアルバムのタイトルが「COPY」って、自虐にも程があるよ。
【収録曲】
1.She was beautiful
2.無効の日
3.生活
4.君待ち
5.デイパス
6.負け犬
7.(I can’t)change the world
8.Drawn the light
9.パッチワーク
10.土曜日