くるり「ソングライン」

ソングラインのジャケット写真
くるり「ソングライン」(2018)

2018年9月19日発売、12枚目のフルアルバム。

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感想

前作「THE PIER」から約4年ぶりということで、オリジナルアルバムの発売間隔としては最長ブランクでのリリース。

「THE PIER」が世界各国の音楽をくるり流に咀嚼して、作り出された力作だったことを考えると、今作はかなり肩の力を抜いた自然体な作品になっているかなと。

フォーク、カントリーを土台とした心地よく優しいサウンドが中心となっており、BGMとして聞き流す感じだとあっさりした曲が多いなという感想。

しかし、ヘッドホンで集中して聴くと細部にわたってアイデアが詰め込まれていることに気付く。

過去に様々なジャンルを取り込んできた彼ららしく、影響元へのリスペクトとオマージュが散りばめられており「これは、○○を意識してるな」という風にクイズ感覚で曲を楽しむこともできた。

加えて、今作は「ソングライン」というタイトル通り「歌」にフォーカスしたアルバムになっている。

「歌」を伝えよう/届けようという意思がはっきりと感じられた。

一つ一つの言葉を丁寧に、まるで小さな子供達に経験や昔話を語りかけるように歌う。
(歌詞も子供達に語りかけるような歌詞が多いなと個人的に感じた)

「ソングライン」はオーストラリアの先住民アボリジニの神話を元にした言葉らしいが、何十年・何百年経っても語り継がれる神話のように「歌」も伝承されていってほしい。

そんな思いも込められているんじゃないかと、今作を聴いていて感じたけど考えすぎだろうか。

ちなみに元々はアルバムを2枚に分けてリリースする予定だったらしい。「歌モノの作品」と「実験的な作品」と分けて予定していたそうだ。
(後者に元々収録する予定だった曲の一つが「Tokyo OP」)

「実験的な作品」に収録されるはずだった未公開曲は、今後なんらかの形でリリースされることを願っている。

今作のような「歌」を大切にした彼らも魅力的だけど、攻めたサウンドの彼らも魅力的だと思っているので。

全曲感想

1.その線は水平線


絶妙な歪み具合のエレキギターにこだわりを感じるミドルテンポのロックナンバー。

近年のくるりの楽曲の中でも、かなりの名曲感。

「ソングライン」というタイトル通り歌ものがメインを締める今作において、アルバムを代表する名刺代わりの一曲といったところか。
(ちなみに、アルバムの1曲目をシングル曲が飾るのは彼らの作品では初めて)

曲自体は2010年頃に作られた曲らしい。「奇跡」と同時期。

歌詞に出てくる「どこにも行けないの?」という問いには、かつて「ワールズエンド・スーパーノヴァ」で「どこまでもゆける」と16年前既に答えを出している。

かつて出した答えを子供達に優しく教え伝えるような、ポジティブなメッセージが良いですね。

2.landslide

カントリー調の優しいサウンドが歌詞と相まって、田舎の風景を思い出させる。

夏から秋を経過して、冬になっていく景色を歌った歌詞だがタイトル「landslide=地滑り、山崩れ」ということで、深読みできなくもない。

「朽ち果てたまま残る景色」、「焼け跡の街」といったフレーズは、2018年に襲った自然災害(豪雨、台風等)を思い出してしまう。

最終的には「街は賑わい」と歌っているところは、願いや希望を感じます。

3.How Can I Do?

前作「THE PIER」に収録されてそうなオリエンタルなサウンド。曲の終わり方はディズニー映画の主題歌っぽいものを感じた。

あと、ボーカルの声が艶やか。以前とは違った声の出し方だと思った。

「どこまでも君と~歩き出せるよ」のフレーズなんかは「その線は水平線」とリンクする感じがしたり。

アルバム全体を通して「歩く」とか「走る」あるいは「駆け上がる」といったワードが多いので、今作はそういう前を向いたムードなんだろうなと。

4.ソングライン


たくさんのアイデアを詰め込みながらも、歌ものとして高いクオリティ。アルバムのタイトルトラックなのも頷ける。

「缶の蓋を開ける音」や「野球の応援」といったSEに、ラヴェル「ボレロ」の引用、「ドラムの音を左チャンネルからのみ出力(ビートルズオマージュらしい)」など、しっかり聴けば聴くほど新しい発見がある。

元々のタイトルは「ハイネケン」だそうだ。

中盤からラストにかけてのギターソロが個人的にお気に入りです。

5.Tokyo OP

プログレッシブなインストナンバー。

ロールプレイングゲーム(RPG)の戦闘BGMに使われててもおかしくなさそうな雰囲気がある。
(過去に「LV30」や「LV45」という曲で、RPGをモチーフとした歌詞を歌っていたことも思い出す)

元々のタイトルは「東京オリンピック」、このアルバム収録するつもりではなかったがライブで演奏したところ好評だったので収録したそうだ。

様々な楽器の音が入っていて、それがオリンピックというたくさんの国が参加するイベントを表わしているということかな。

6.風は野を越え

フォーキーなメロディと要所で用いられるトランペットの音色が印象的な楽曲。

何となく「ジュビリー」にサビのメロディが似てるような似てないような。

歌詞の言葉選びから、のどかな夏の田園風景が思い浮かぶ。

今作は全体的に季節の描写が多い作品ですね。

7.春を待つ

スローテンポでしっとり歌い上げる。間奏のトランペットソロは名演だと思う。

20年以上前(デビュー前)からあった曲とのこと。

「ひとりで」というフレーズが寂しく響く。

冬から春という萌芽の季節をあえて物寂しく歌うところが珍しいなと。

8.だいじなこと

アニメの主題歌として書き下ろされた楽曲。90秒ちょっとだけど、テレビサイズではなくフルバージョン。

90秒ちょっとの楽曲で「だいじなこと」を歌うっていうのは面白いなと。

色々そぎ落としたとしても最後に残ってしまうのが「だいじなこと」なのかなと考えたり。

9.忘れないように


跳ねるリズムが印象的でポップな楽曲。この曲も「春を待つ」同様、20年以上前に作った曲だそうだ。

サビ終わりは、OASIS「Go Let It Out」のオマージュ(というより借用)ですね。

時系列的(OASISの同曲は2000年リリース)に、後からこの部分を書き足したのかな。

「その線が水平線」を聴いたときも思ったけど、この曲も子供達に語りかけるような歌詞だなと。

10.特別な日 (Album mix)

ジェイアール京都伊勢丹20周年を記念して提供した曲。

華やかに「特別な日」を称えるのではなく、日々の積み重ねが「特別な日」を作ったんだというメッセージをシンプルなバンドサウンドから感じ取った。

「思いきり泣いたり笑ったり」というフレーズは、彼らの名曲「ばらの花」を思い出しますね。

11.どれくらいの

ラストのギターソロが信じられないくらい格好いい。あと、最初の歌フレーズはBUMP OF CHICKEN「花の名」を思い出したり。

自分にとっては些細なことでも、他人にとっては大きなことだったりする。

コミュニケーションの難しさを少ない言葉数で歌い上げた。今作でも屈指の歌詞の出来だと思う。

12.News

本人曰く「丁寧に歌っている」というアルバムラストを飾るフォークソング。

いろんなニュースが飛び交う
下から上へと
スクロールするのも親指
気付けば俺も親父だ

「News」

「親父だ」と自虐しながらも、「変わらなきゃ」と変化を許容する。

だが、最後の抵抗のように歌われるラストのサビのフレーズが胸に迫る。

目に見える文面だけでは伝わらないもの。

文面の奥の真意を思い浮かべることが出来るだろうか?

押しつけがましい感じを全く感じさせずに、警鐘を鳴らしていて好感を持ちました。

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