サカナクション「kikUUiki」

kikUUikiのジャケット写真
サカナクション「kikUUiki」(2010)

2010年3月17日発売、4thアルバム。

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感想

最初にこのアルバムを聴いたときの印象は、シングルとして聴いていた「アルクアラウンド」のイメージが強かったので、全体的に地味な印象だったのを覚えている。

特にインストを挟んだ「アンダー」以降は内省的な内容で、彼らに抱いていた「ライブ映えするダンサンブルな楽曲を得意とするバンド」というイメージが変わった。

“「アルクアラウンド」を聴いてくれた人達に、自分達の音楽をどう聴いてほしいか?”
“どういう行動を取ってほしいのか?”

この「kikUUiki」というアルバムは、上記の2点を意識して作られたという。

その点で言えば「思ったより深さがあるバンドみたいだから、しっかり聴かなければ」と思ったし、打ち込みを多用した音楽に対する興味も以前より増したので、彼らの狙いはある程度成功したんじゃないかと。

ただ、以降の曲と比べると弱いのは繰り返し聴いても否めない。
(「アルクアラウンド」、「YES NO」、「目が明く藍色」は良いと思うけど)

さらに加えると歌詞が抽象的過ぎるんだよな・・・。
それっぽいフレーズはあるけど、ざっくりし過ぎてて共感できないというか。

「共感できるか否か」が歌詞の良さを決めるわけではないけど、個人的にはもう少し分かりやすい方が好みかな。
(次作「DocumentaLy」では、少し歌詞が分かりやすくなって好みの方向になったのだけど)

そんなわけで、彼らの最高傑作とは言えないけど、良い作品だとは思います。

覚醒前夜といった感じでしょうか。ラストの「目が明く藍色」の壮大さに、その後の活躍を予感させるものを感じ取りました。

全曲感想

1.intro=汽空域

息を吸う音が所々に入り、最後に「汽空域の世界」という言葉で締めるインスト曲。

終盤では、左から鳥のさえずり等の「自然の音」、右からエンジン音等の「都会の音」を流し、最終的にそれらが混じり合う。

アルバムタイトルである「kikUUiki=汽空域」を表現したんだろう。

「kikUUiki=汽空域」は、淡水と海水が混じった場所である「汽水域」をモチーフとした造語。

テクノ/エレクトロサウンドとロックを混ぜ合わせた彼らの音楽性を一言で表現したワードが「汽空域」ということか。

2.潮

ゆったりとしたBPMに壮大なコーラスが乗っかる。アルバムの実質的な一曲目としては意外なというか、落ち着いた楽曲。

激しく胸打つ思想に 踊らされ生きてきた

「潮」

彼らが地元の北海道から東京に出てきたときの心情を歌う。

地方から東京に出てくる人は夢や志(=激しく胸打つ思想)を持っていたはず。

実際、東京で暮らしてみたらどうなるかというと、そんな夢や志を忘れてなんとなく生きている人も少なくない。

そんな周りに流されてしまった人を「人は潮」と例え歌う。

それがダメなことと歌っているわけではなく、ただ事実(=上京して目にしたこと)として備忘録として歌っている感じがする。

3.YES NO

全体を通じて和の雰囲気を醸し出す楽曲。

後半になるにつれてダンサンブルな要素が強くなっていくという、サカナクションらしい一曲に仕上がっている。

仮題は「あいさつ」とのことで、歌詞のテーマ「あいさつができない人」らしい。

歌詞を読んで「あいさつがテーマだな!」とすぐ理解できる人は少ないと思うけど・・・。

あいさつも含めた広義のコミュニケーションの食い違いが歌詞のテーマだと自分は思った。

「すぐに泣く/咲く」といった聞き間違いであったり、「YES/NO」で会話する中での「YESやNO」に含まれる微妙なニュアンスの違いであったり、日常会話でありがちな食い違い。

「いつも通り」っていうのが皮肉が効いているように思う。

些細なズレぐらいだったら会話が成立してしまうという、コミュニケーションの軽薄さも歌っているのかなと。

4.アルクアラウンド


サカナクションというバンドの名が一気に知れ渡った楽曲。

随所に入る印象的なシンセやサビ前のタメなど、その後の彼らの代表曲にもみられる特徴がふんだんに使われている。

サカナクションヒット曲のプロトタイプとも呼べる存在だと思う。

この曲に関して言わんとしていることは「東京(+ポップシーン)で戦っていくぞ」っていう決意表明ということは分かるけど、抽象的な表現が多いのが好き嫌い分かれそう。
(「何か」って何だよ?、みたいな)

その抽象性が「都会で生きる孤独な若者の不安」みたいなのを表現している印象は受けるが、共感しにくいという面も自分は感じた。

良い曲であるのは、間違いないんですけどね・・・。

5.Klee

ライブで盛り上がりそうなギターロック。サビの「クレー」のインパクトが強く、耳に残る。

見えないもの 描きたくて
僕は言葉を使う 使う

「Klee」

山口一郎が好きな画家パウル・クレーを題材にして、歌詞を書くことの苦悩を吐露した曲。

この曲を聴いてクレーの絵を見てみたんですけど、色の付いた四角形を組み合わせて人や建物を表現するというのが特徴的だった。

パッと見で何を描いているのか分からない絵も多くて、かなり抽象的な印象。

その抽象的な絵から山口は影響を受けているということは、よく分かった。

6.21.1

リズムトラックから始まって、生音と打ち込みが入り交じったダンサンブルなサウンドが徐々に展開していくインスト曲。

曲名は、彼らがthe telephones、OGRE YOU ASSHOLEとやっていたイベント「version21.1」から。

異なる音楽性を持つバンドがシーンを作っていくというイベントの趣旨と、今回のアルバム「kikUUiki」の混ざり合うというテーマに共通点があったため、この曲名になったとのこと。

7.アンダー

不穏なシンセが特徴的な楽曲で「アンダー」という曲名の通り、聴いていると深い海の底に沈んでいくような感覚に陥る。

抽象性がさらに高くなっていく歌詞。難しい。

インタビューによると「ハッピーな時とネガティブな時、その二つの精神の一番下はどこだろう?」、「生きてることが一体どういうことなのか?」ってのを考えながら書いた歌詞らしい。

冒頭のフレーズはその考えが言葉になっている気がするけど、説明してもらわないと分かんないなこれは・・・。

8.シーラカンスと僕

前曲「アンダー」と繋がってて、深海に潜っていきました的な感じ。全体的には不穏な感じだけど、サビで鳴ってるシンセが明るい音色で不思議な感じがする。

自らをシーラカンスに例え都会(=深海)を生き抜いていく様を描く。

「青い目」っていうところに「若さ」を残している部分が、ラストの「僕が僕のまま~」に繋がっていくんだと思う。

9.明日から

ダンサンブルな曲で彼らとしては目新しさはないが、間奏のやり過ぎなくらいのシンセには笑ってしまった。

「流されていく」という、アルバム冒頭の曲「潮」でも描いた題材。

「明日は明日」と切り替えているようで、置いてけぼりになった過去も捨てきることは出来ないみたいな人間の面倒くささを歌ったような、そうでないような。

普通にポジティブな曲にも聞こえないこともないけど、なんか影があるんだよな。

10.表参道26時

歌謡曲風のメロディに、狙ってチープにいたのであろうサウンド。さらに、ベース草刈のボーカルをメインにしたサビと色々な実験をした曲。

表参道に26時にいない人間である山口が、表参道に26時にいる人間を描いてみたとのこと。

お洒落なバーで、男が連絡先を渡そうとするのに気づいて、牽制しつつタイミングをはぐらかす女みたいな感じですかね。

ちょっと古い(昭和的な)想像のような気がする。

11.壁

「さよならストレンジャー」の頃のくるりっぽいフォーク調のサウンド。後半にかけて壮大になっていく。

人生において色々な壁があるけど、「実は自分自身が壁なんじゃね」と気付いたことから生まれた曲とのこと。

その壁に「立ち向かうことが出来ない」自らの弱さを曝け出す。わりと多くの人が共感することが出来る歌詞なんじゃないかな。

12.目が明く藍色


一曲の中に複数のジャンルを詰め込んだ大作。オペラ的な展開あり、ストリングスの入った壮大なラストありと、力の込めたのがよく伝わってくる。

この「kikUUiki」という作品の中でも、重要な楽曲だというのは間違いない。

夜から朝になっていく瞬間(朝と夜が混ざり合う瞬間、すなわち汽空域的なニュアンス)を鮮やかに描いて、「君の声を聴かせてよ」で色々な物から解放的な感じですかね。
(いまいち、自分でも何を書いてるか分からなくなるがニュアンスが伝われば幸い)

メガアクアイイロ メガアカイイロ

「目が明く藍色」

この部分が夜から朝になったことを表わす。

さらに突っ込めば、「megaak”u”aiiro→megaakaiiro」と”U”を抜いて変化を表現しているんだけど、”U”を逆さまにすると「積集合」の形になる。

「和集合」から「積集合」へ、ただ足して出来たのではなく混ざり合って一つの物が出来た。

ロックとエレクトロの融合=サカナクションそのものを表わす的な感じか。

アルバムテーマ「汽空域」を表現。アルバムジャケットも一緒に見ていただければより分かりやすいと思う。

と、細かい仕掛けがしてある楽曲だけど、どれだけの人がここまで気付くのだろうか。
(自分もインタビュー記事を読んで知った)

そういうところ(言葉を選ばずに言えば面倒なところ)が魅力なんだろう。

とにかく、アルバムラストにふさわしい力作。

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