Mr.Children

Mr.Children「深海」

投稿日:2014年8月8日 更新日:


Mr.Children「深海」(1996)

~ここから何処へ向かったんだい?~

日本を代表する4人組バンド Mr.Children の5枚目のフルアルバム。
ミリオンを連発したシングル曲を収録せず、コンセプトにこだわった作品。
このアルバムが発売された当時、僕は音楽と出会っていないので、どういう反応をもって迎えられたか知らない。
しかし、国民的なバンドがこんな重く、暗いアルバムを出すのには相当の覚悟がいるだろう。
ミュージシャンとしてMr.Childrenの意地を感じる傑作。

インスト曲「Dive」でこのアルバムは幕を開ける。
深い海に潜っていくような感覚。
この曲の時点で、普通のアルバムとは違うことに気付く。

前曲と繋がって始まる「シーラカンス」
アコギの音が消え、エレキギターのカッティングが入ってくる瞬間は鳥肌が立つ。

「シーラカンス 君はまだ深い海の底で静かに生きてるの?」

この頃の桜井さんの精神状態が反映された歌詞。
スターになって感じたのは、得体の知れない不安と孤独だった。

アコギで紡がれるスローバラード「手紙」
いまのミスチルに見られる、大げさなストリングスはなく、シンプルなサウンド。
別れを題材にした歌詞は、どうしようもなく寂しい気持ちにさせる。

前曲とは一転して、明るいメロディの「ありふれた Love Story 〜男女問題はいつも面倒だ〜」

「夢見たもんと遠く離れていた 苛立っていた 戸惑っていた」

歌詞はこんな感じで、明るくはないんだけど。
本当に、何やっても上手くいかない世の中。
このアルバム発売から10年以上たっても何も変わらない。

淡々と歌われる「Mirror」
この曲で歌われるような「単純明快」なラブソングは、このアルバムにはない。
どれも、屈折している。

デモ音源を繋ぎ合わせた「Making songs」
最後には、次曲のフレーズが・・・。

オリコン史上初、発売初週で100万枚を突破した名曲「名もなき詩」
単純に、音が良い。今のミスチルには見られない、輪郭がはっきりしたギターサウンド。

「愛はきっと奪うでも与えるでもなくて 気が付けばそこにある物」

初期は、爽やかなラブソングを歌ってきた彼らがたどり着いた愛の境地。
みんな、もがいてるんだ。そんな世の中なんだ、昔から。

桜井さんが弾き語る、2分に満たない社会風刺曲「So Let’s Get Truth」

「ゴミのようなダンボール そこで眠る老婆 錆びた夢の残骸 明日は我が身」

いまのミスチルしか知らない人にとっては、考えられないフレーズだろうなあ。

チャンネルを変える音で作られている「臨時ニュース」
次曲への繋ぎの役割を果たす。

このアルバムで最も攻撃的な「マシンガンをぶっ放せ」 ダークなミスチル全開。

「飼い慣らされちまった本能を そして事の真相をえぐれ」

いまのミスチルに聞かせてやりたいフレーズ。

9分近い大作、戦場から帰って来た男について歌う「ゆりかごのある丘から」
間奏のトランペットソロが狂気じみていて、素晴らしい。

桜井さんのぶっきらぼうなボーカルが際立つ「虜」
歌われるのは汚い恋愛。恋愛に溺れた男の歌。
ラストの女性コーラスが圧巻。

このアルバムの中では、希望を感じてしまう名曲「花 -Memento-Mori-」

「最大限の夢描くよ たとえ無謀だと他人が笑ってもいいや」

この2番サビのフレーズに続くCメロが素晴らしい。空間系のサウンドを使って、緊張感を演出。

ラストはタイトルトラックの「深海」

「シーラカンス これから君は何処へ向かうんだい?」

未来への不安を自問自答する。
ラストの桜井さんの「連れ戻してくれないか」という悲痛な叫びは心に迫るものがある。
アウトロの長めのギターソロも名演。余韻を残しながら終わる。
そして、再び、深い海に沈んでいく・・・。

最初から最後まで、深い海の底にいるような感覚に陥る。
今のミスチルからは考えられないほどの重さ。明るいと胸を張って言える曲は一つもない。
サウンド面では、バンドサウンドが非常にしっかりしている。
最近の傾向である、桜井さんのボーカルのおまけみたいなサウンドではなく、
各楽器がしっかりと聴こえるアレンジとなっている。

歌詞については、桜井和寿さんのパーソナルな感情が吐き出されている。
追い詰められた精神状態の中で、思いの丈をありのまま吐き出す。
もう一度、このアルバムのような歌詞を書くことは不可能だろう。
それぐらい思い詰めたフレーズばかり。

このアルバムは傑作に違いない。全体を通しての統一感は見事。
しかし、単純に良い曲が多いかと問われると、難しい所がある。
桜井さんが書く歌詞は印象に残るのだけれども、メロディにフックがある曲は少なく、
メロディメーカーとしての桜井さんの本領が発揮できているとは言えない。
その点では、統一感がないものの、ヒット曲で埋め尽くされた次作「BOLERO」の方が個人的には好き。

J-POPの歴史を辿っていく中で、一度は聞いておきたいアルバム。
あなたは、このアルバムを聴いて、どのような感想を抱きますか?
少なくても、いまのミスチルとの違いは感じられるに違いない。
時代が全く求めていなかったこのアルバムを出したからこそ、
ミスチルはこれほどの支持をいまでも集めているのではないだろうか?
人々は、いつでも新しい刺激を求めるのだから。

① Dive
② シーラカンス
③ 手紙
④ ありふれたラヴ・ストーリー ~男女問題はいつも面倒だ~
⑤ Mirror
⑥ Making songs
⑦ 名もなき詩


⑧ So Let’s Get Truth
⑨ 臨時ニュース
⑩ マシンガンをぶっ放せ
⑪ ゆりかごのある丘から
⑫ 虜
⑬ 花 -Mémento-Mori-

⑭ 深海

スポンサーリンク

レクタングル大

レクタングル大

-Mr.Children
-,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

Mr.Children「REFLECTION{Drip}」

Mr.Children「REFLECTION{Drip}」(2015) ~未完での帰還~ 「最高傑作」、そんな言葉が音楽雑誌に並んでいた。このレベルのバンドに軽々しく使えない言葉である。 この作品には …

【新曲レビュー】Mr.Children「himawari」

2017年7月26日発売のMr.Childrenの新曲「himawari」のレビュー。 スポンサーリンク 感想 ここ数年、いや10年ぐらい遡っても、彼らが発売したバラードのシングルの中では一番の名曲か …

プロフィール

著者:S.S
1990年生まれ。愛知県出身。

邦楽アルバムの感想とコラム記事を中心に書き殴っていきます。
特にロキノン系といわれるジャンルを好んで聴く。

カテゴリー