King Gnu「Sympa」

sympaのジャケット写真

2019年1月16日発売、メジャーデビューフルアルバム。

とある音楽番組の「2019年ブレイクするアーティストランキング」で1位になったバンド、King Gnu。以前から名前は知っていたけど、音源を聴いたことが無かったので、過去の彼らの作品と、メジャーデビューフルアルバム「Sympa」を聴いてみた。今回は「Sympa」の感想です。

まず、彼らの来歴を簡単に辿ってみる。

彼らの名前が知られ始めたのは2017年のこと。デビューアルバム「Tokyo Rendez-Vous」を10月に発売しコアな音楽ファンの間で話題となる。

加えて、同年11月発売の米津玄師のアルバム「BOOTLEG」に収録された曲「爱丽丝」で、King Gnuの常田大希が演奏とプロデュースで参加したことも、彼らの知名度を上げた要因の一つ。

で、今作「Sympa」を聴いた感想なんですが、四点言及しようかと。

①ポップになった

今作を聴く前にデビュー作である「Tokyo Rendez-Vous」を聴いた。その上で「Sympa」を聴くと、かなりポップになったなと。

彼らは「トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル」と自らの音楽を称していて、ロック/ブラックミュージック/ヒップホップなど様々なジャンルを混ぜ込んだ曲を作っている。

ただ、自分が前作を聴いたときに思ったのが「ミクスチャー・スタイルは分かるけど、最終的にどういう音楽に落とし込みたいのかな?」ということ。様々なジャンルをインプットした上でアウトプットした曲が、ポップスなのか、ロックなのか、それともアーティスティックなものなのか。最終的に、目指す方向性がよく分からなかった。(楽曲毎の作り込みやアイデアは凄いと思いましたが)

しかし、今作ではポップスを目指すということが明示されていると思った。なぜ、そう思ったのかは後ほど書きますが、このポップになったという点に対してマイナスな感想もネット上で目にした。「前作の方が(サウンド面で)刺激的だった」的な感想もちらほら。

ですが、「King Gnu=ヌー(ウシ科の動物)の如く人を巻き込む力を持つバンドを目指す」という意味がバンド名に込められていることを踏まえると、ポップになるのは必然なのかもしれない。

ましてや、メジャーデビューという分かりやすく注目を集めるタイミングでのアルバムなので。多くの人に聴いてもらうためにポップネスは大切なんですよね・・・。

②サビの歌メロが更にわかりやすくなった

「ポップになった、ポップスを目指すようになった」と感じた理由は、歌メロが更に分かりやすくなったことが理由の一つなんじゃないかなと思う。”更に”と書いたのは、前作「Tokyo Rendez-Vous」でもサビでは印象的な歌メロだったから。ただ今作は、より印象に残る歌メロになっていた。

個人的に好きなのは「It’s a small world」のサビの歌メロ。


King gnuには常田大希と井口理という2人のボーカルがいる。この曲では井口理がメインボーカルを務めているけど、この曲に限らず彼がサビを歌う曲は、必ずと言っていいほどサビのメロディが耳に残る。これは、井口の中性的で綺麗な声質によるものも大きいんだろうけど、常田が書くメロディの良さが大前提としてあるんだと思う。

ちなみに、前作では一曲の中に常田と井口の両方がボーカルとして基本的に参加していたが、今作では一方がほとんどの部分を歌って一方はコーラスのみという曲も増えてきている。

常田がメインボーカルを務める「Slumberland」では彼の少し癖のある歌声が曲の説得力を支えているように感じるし、井口がメインボーカルの「Don’t Stop the Clocks」は彼しか歌えないんじゃないかってぐらいのハイトーンが曲の雰囲気を形成している。

常田と井口、この二人のボーカルを要していることも彼らの武器であることを今作を聴いてより強く感じた。

③ストリングスの効果的な導入

今作は「ポップになった」と何度も言っているんだけど、いわゆるJ-POP的なポップにはなっていない感じがした。なぜだろうと考えたときに「ストリングス」の使い方が一つの要因かなと。(このストリングスの使い方は今作だけではなく、前作にも共通する話ですが)

ストリングスはヴァイオリンなどの弦楽器ですけど、J-POPだとイントロとかサビの裏で感動的な雰囲気を出すために鳴らされるケースが多い。(言い方は悪いけど、とりあえず盛り上がる場面ではストリングス入れとけ的な)

しかし、King Gnuの曲ではバンドサウンドの一つとして上手くストリングスを使っている印象。

例えば、「Slumberland」だと、イントロでリフとして使われ、2番のサビ前でも印象的なフレーズを鳴らしている。


ストリングスの使い方については、彼ら自身かなり強いこだわりがあるようだ。

──アルバム全体を通して歌詞だけじゃなく、サウンドやメロディにもそう感じました。エモさもありますが、若さや衝動がほとばしる感じではないですし。例えば「破裂」は、クラシカルなサウンドで。

常田 ストリングスのアレンジもちゃんとやってるんです。J-POPによくある、「とりあえず後ろにストリングス付けときゃ感動するだろ」みたいな感じではなく(笑)。1曲ごとに何かしらのチャレンジをしています。同じことをやっても仕方ないってことですかね。

出典:King Gnu「Tokyo Rendez-Vous」インタビュー|鬼才集団が提示する新たな歌モノのスタイル – 音楽ナタリー 特集・インタビュー

──King Gnuの楽曲はストリングスアレンジも強烈ですよね。歌の添えものではなく、ときとしてアンサンブルの主役となるような主張の強さを感じます。

常田 そうですね。いわゆるJ-POPによくある、ただ白玉のコードを鳴らすような入れ方は基本的にしていなくて。ストリングスもほかの楽器と同様に、バンドサウンドの1セクションとしてちゃんと考えています。

出典:King Gnu「Sympa」インタビュー|誰よりも高い場所へ、4人が放つ初メジャー作 – 音楽ナタリー 特集・インタビュー

バンドマスターである常田大希が東京藝術大学でチェロを専攻していたことが、ストリングスアレンジのセンスの良さの源だろう。「Slumberland」に限らず、他の曲でも効果的に用いられるストリングスが彼らの曲を魅力的にしている要因の一つであることは間違いない。

④歌詞について

彼らの歌詞について書こうと思ったんですが、自分自身上手く消化できていないというのが正直なところです。曲を聴いていて、印象に残るフレーズはいくつかあったのは確か。

例えば、「Slumberland」のこのフレーズ。

Rock‘n’ roller sing only‘bout love and life.
(所詮ロックンローラーは愛と人生しか歌えないんだ)

「Slumberland」

「うん、確かにそうだよね」と納得する。

あと、「It’s a small world」のこのフレーズも。

君の世界に僕も生きられるなら
それは素敵な事でしょう?

「It’s a small world」

「うん、それも確かにそうだ」と首を縦に振る。

実際、これらのフレーズはインパクトがあるし、耳に残っている。作詞を手がける常田もインパクトのあるフレーズを作ることにはこだわっているようである。

──「Flash!!!」の歌詞はまさにパンチラインだらけですよね。「ただ下り坂を猛スピードで駆け抜けるんだ」とか、一度聴いたら忘れられなくなるフレーズばかりで。

常田 この曲に限らず、パンチラインを書くことは俺が最重要視していることなんです。やっぱり言葉が強くなきゃいけないし、抽象的でなんとなく洒落ているような歌詞には絶対にしたくないんで。

出典:King Gnu「Sympa」インタビュー|誰よりも高い場所へ、4人が放つ初メジャー作 – 音楽ナタリー 特集・インタビュー

ただ、歌詞を追いながら曲を聴いていくと「八方美人感」があるというか、あれもこれもって感じがするのが気になった。

バンドコンセプト的に、たくさんの人を対象としている歌詞(何かしらのフレーズで引っかかる歌詞)であることは理解できるけど、彼らの内面的なものは見えてこなかったですね・・・。好みの問題と言ってしまえば、それまでなんですが。

最後に

記事の冒頭で「2019年ブレイクするアーティストランキング」という話があったけど、ここで扱っている「ブレイク」の定義が「自ら主体的に音楽を聴きに行く層に知られる」ということであれば2019年のブレイクは間違いないのでは。

一方で「音楽にあまり興味の無い人でも知っている」という定義であるなら、まだ時間はかかるかもしれない。何かしらの楽曲を多くの人に知ってもらう必要がある。
(早速、2019年1月期のドラマに彼らの楽曲が起用されたようですが)

いずれにしても、今後迎える20年代を代表するバンドになる可能性を秘めていることは、今作を聴いて感じました。

収録曲

1.Sympa I
2.Slumberland
3.Flash!!!
4.Sorrows
5.Sympa II
6.Hitman
7.Don’t Stop the Clocks
8.It’s a small world
9.Sympa III
10.Prayer X
11.Bedtown
12.The hole
13.Sympa IV

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