indigo la End「PULSATE」

PULSATEのジャケット写真
indigo la End「PULSATE」(2018)

2018年7月18日発売、メジャー4枚目のフルアルバム。

スポンサーリンク
レクタングル広告大

感想

初めてこの「PULSATE」を聴いたときは、あまり良い印象を抱かなかった。

というのも「これ、他のバンドならソロアルバムでやるような作品みたいだな・・・」と第一印象で思ったから。

川谷絵音が普段聴いているであろう海外R&Bあるいはヒップホップを意識した音作りだと、作品全体を通して感じる。

普段聴いている音楽と、以前からバンドで鳴らしてきた音楽に乖離がある場合、ソロとして前者の音楽をアウトプットするケースは少なくない。

例えば、ASIAN KUNG-FU GENERATIONにおけるGotch & The Good New Timesであったり、RADWIMPSにおけるillionであったり。

今作はindigo la Endのバンドサウンドを用いつつも、川谷絵音の直近インプットの影響が色濃く出ている点において、上記で挙げたようなソロ活動の作品に近いものを感じる。

実際、以前の楽曲で見られたような長田カーティスによる印象的なギタープレイは少なくなった。

自分はギターがしっかり鳴ってるバンドサウンドが好みで、indigo la Endというバンドに興味を持ったのも長田カーティスが奏でるメロディアスなギターに惹かれた部分が大きい。

そのギターが聴けなくなったという点で、寂しさを感じる部分は確かにあった。

こう書くと、この作品に否定的なのかなと思われるかもしれないけど、全然そんなことはないんですよね。

曲単位で言ったら「蒼糸」は彼らのスローな楽曲の中ならトップクラスに名曲だと思うし、「Unpublished manuscript」の痛いほど伝わってくる切実さも惹かれるものがある。

聴けば聴くほど、サウンドにおける工夫を感じるし、今作は歌詞も以前にも増して力を入れて書いてるなとも思った。

ただ、ちょっと寂しいってだけです。

既存曲のリミックスも全く別のサウンドになってて、indigo la Endのバンドサウンド消えちゃってるしさ、そういうところがね・・・。

というわけで、自分としては「Crying End Roll」の方が好みですが、次作が早くも気になってます。

どういう路線に進むんですかね?

ゲスの極み乙女。の方で広い層向けの曲はやって、indigo la Endはより音楽的実験を試みるバンドになっていく可能性は考えられる。

そうなると、次のインディゴの作品ではR&Bやヒップホップへのさらなる傾倒が起こっても不思議じゃない。

むしろ振り切ってやってくれるなら、それはそれで面白い作品になりそうだし聴いてみたい気がするけど果たして。

全曲感想

1.蒼糸

彼らのアルバムで、この曲のようなゆったりとしたリズムで始まる作品は今まで無かったので、「優しいアルバムになるのかな」って予感がした。

最初聴いたときは「川谷絵音の弾き語りでも成立しそう」と思ったけど、聴けば聴くほどバンドアレンジの精密さに気づく。

全体的には歌を引き立たせるシンプルな(引き算的な)アレンジ、間奏でシンセやら色んな音が入ってくるところは緊張感があってメリハリが効いている。

ヒップホップ風の歌メロが途中であったのも、フックになっていて耳に残った。

歌詞は「終わってしまった恋に対する後悔」という何度も彼らが歌ってきた主題。

「糸は吉に絡まるから」⇒「結」ってことで、結末を迎えられなかった後悔を言葉遊びをしながら歌っている。

丁寧に言葉を紡いでいて「作詞にかなり力を入れたな」って曲になってます。

2.煙恋

この曲も「蒼糸」と同じように、弾き語りで成立しそうな曲だなと。

ピアノの音色に乗せて聞こえてくるファルセットを用いたボーカルが耳に残る。

2曲続けてゆったりとした曲を続けたことに凄くメッセージがある気がした。

「こういう音楽をバンドでやっても良い感じでしょ?」みたいな価値観の提示。

煙草の煙が揺れる様子と恋愛における心の動揺をリンクさせた歌詞。

なんとなく、チャットモンチ-「染まるよ」を思い出した。

今年、彼女達が完結したから余計にそう思うのかもしれない・・・。

3.ハルの言う通り

早めのテンポの曲が来て少し安心した自分がいる。

初期の頃の「正統派ギターロック」的なイメージがあった頃に彼らを聴き始めたので、この手の曲が一曲は入っていてほしいのです。

アウトロで長田カーティスが弾く短めのギターフレーズが格好いいのも「これだよ、これ。このギターが良いんだよ」って呟きました。

「夏夜のマジック」、「冬夜のマジック」に続く季節を題材にした歌、この曲は「春(ハル)」。

歌詞の読み取りが段々と難しくなってきて正直な話、理解が追いついていない。

「熱恋」とか「恋傀儡」とか、よくそんなフレーズ出てくるなと感心する。

4.Play Back End Roll

曲タイトルとも相まって「この曲で、この作品ひょっとして終わるのか?」と勘違いしてしまいそうになる壮大なバラード。

たっぷり余韻を残すアウトロなんか、完全にアルバムラスト曲の佇まい。

この曲に関しては歌詞の内容からしても、前作「Crying End Roll」に入ってても違和感ないなと。
(前作に収録する予定だったそうですが、見送ったという経緯があるようです。)

前作の楽曲と合わせて、この曲も含めプレイリストを作成したらまた新たな楽しみ方が出来るんじゃないかと思ったり。

5.星になった心臓

シンセみたいな音色で奏でられるイントロのギターフレーズが印象的。

間奏のコーラスが発声練習みたいで面白いなって思いました。

この曲はタイトルが良いなと。

「星になった」ってフレーズは「死」の比喩で使われがちだけど、この曲では「生きてる」ってことを覚えててほしいから「星になってみたい」と歌っている。
(物理的な「生」ではなくて、「あなたの心の中で生きてる」的なニュアンスもあると思う)

「心臓」のワードも、アルバムタイトル「PULSATE=鼓動する」とリンクしてます。

川谷絵音のロマンチックな死生観を垣間見た気がする。

6.雫に恋して(Remix by HVNS)

アルバム「藍色ミュージック」に収録されていた楽曲をリミックス。

アレンジをしたのは、iivvyyというユニットでも活動しているHVNSという方。

原曲がバンドサウンドを主体としたアレンジだったが、打ち込みを用いた浮遊感溢れるアレンジになった。

前作「Crying End Roll」も既存曲のリミックスが入っていたけど、これはどうなんだろうか。

前作の「ココロネ」のリミックスはアルバムの流れから、収録しても問題ない感じはした。
(命をテーマにした前作に、命を歌った「ココロネ」を入れるのは理解できる)

でも、今回は必然性を感じなかったのが正直なところ。

単純に自分がこの曲の原曲を好きだからかもしれないけども・・・。

7.冬夜のマジック

今作では「ハルの言う通り」に並ぶ、多くの人が抱く彼らのパブリックイメージに近い曲だと思う。

女声コーラスの重なり方とか、サビの川谷絵音のファルセットとか、分かりやすくindigo la Endって感じ。

歌詞にはバンド名の由来にもなった「スピッツ」が登場。
(indigo la Endというバンド名は、スピッツのアルバム「インディゴ地平線」から名付けている)

あと「さよならのベル」ってフレーズがあったけど、既存曲に「さよならベル」って曲があったのを思い出す。

「さよならベル」も歌詞から連想するに(コーヒー飲んで猫舌になったくだりとか)冬の曲っぽいから、なにかリンクするところはあるのだろうか。

歌詞に登場する「君」が同一人物だったり?

でも、彼らの曲に「君」はたくさん登場するからなあ。

8.Unpublished manuscript

初めて、このアルバムを聴いたときに一番ピンときた曲。

そして、この原稿を書いてるいまもこの曲が一番好きだなと。

サビの歌唱の切実さ、歌詞と相まってグッと胸に迫ってくる。

ラストの「教えてください」のリフレインも素晴らしい。
(その後の女声コーラス+シューゲイザー風のアウトロもグッド)

神様だけが持っている「未発表の原稿=Unpublished manuscript」の内容教えてくれよって歌詞。

せめて悲しい類は選ばせて
銃弾が飛び交わないくらい
いいじゃないか
今年はどうなりますか?
優しい人が死にますか?
淡々と過ぎてみんな忘れますか?

「Unpublished manuscript」

事前に起こること(銃弾が飛び交う、優しい人が死ぬ)が決まってたらさ、それを知って食い止めたいと思うわけだけど、実際そんなことは不可能なわけで。

すごく無力な人間の悔しさというか、そういうやり場のない怒りみたいなものが伝わってきました。

9.魅せ者

軽快なリズムに乗ったポップな楽曲、イントロや間奏の裏で鳴ってるシンセがいい味出してる。

でも、曲順的にもっと前の方にあったら良かったなと。

「Unpublished manuscript」の次曲としては軽快すぎる気が。

ポップなサウンドの楽曲とは裏腹に、歌詞は「許されざる恋」というこのバンドが扱うのには慎重にならざるを得ないテーマ。

「ダメだってわかってるんだけどさ」じゃないんだよ・・・。

10.プレイバック(Remix by Metome)

前作「Crying End Roll」に収録されていた楽曲のリミックス。

この曲を手がけたのは、大阪出身のトラックメーカーMetomeという方。

川谷絵音のボーカルだけ引用して、完全にエレクトロなサウンドを展開している。

感想としては「雫に恋して(Remix by HVNS)」と同じになってしまうので、省略させてください。

11.1988

随所で響かせる女声コーラスが印象的なスローナンバー。

終盤はがっつり歪ませたギターの音も入ってきて、プログレッシブな展開になっていくが、これからもっと盛り上がるぞってところで曲は急に終わってしまう。

「1988」は川谷絵音の生まれ年、今作が2018年に発表されたのでちょうど30年経過したことになる。

「ヘルタースケルターみたいな曲」ってフレーズがあるけどビートルズの同曲のことだろうか。ビートルズの中でもかなり激しい曲。

1988
言葉で小さな命をつぐむ

「1988」

ラストのこのフレーズが意味深。

最初聴いたとき「つむぐ(紡ぐ)」かと思ったんだけど、「つぐむ(噤む)」なんだよねこれ。

「つぐむ」って「黙る」って意味だから、「つむぐ」の方が歌詞の流れからすると自然なんだけれども。

ただ、この曲の最後は急に終わってしまう、すなわち「黙る」ような終わり方になってるから意図はあるように思う。

うーん、難しい。

スポンサーリンク
レクタングル広告大
レクタングル広告大

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする