羊文学「若者たちへ」

若者たちへのジャケット写真
羊文学「若者たちへ」(2018)

2018年7月25日発売、ファーストフルアルバム。

スポンサーリンク
レクタングル広告大

感想

TwitterのTLで「羊文学」というバンド名を見かけて気になり「Step」という曲をYouTubeで聴いた。

好みの音だったので、ちょうど1stフルアルバムが発売されるタイミングでこの作品を手に取った次第です。

いやー、久しぶりに1stフルらしい1stフルを聴いた気がする。

ここ最近のバンドは早くから良くも悪くも完成され過ぎているような気がして、1stフルが発売された段階で「これ以上、伸び代あるのかな・・・」なんて思うこともしばしば。

一方、この「若者たちへ」という作品。

「若者」あるいは「夏」、それに「後悔」という作品のテーマ。加えて塩塚モエカの儚く繊細なボーカルとシューゲイザー/オルタナ直系のサウンドが相まって実に瑞々しい。

作品全体を通して聴くと、「いまこの年齢じゃないと作れないんだろうな」という儚さと、「これからどうなっていくんだろう?」という期待が入り交じる。

実に1stフルアルバムらしい作品だと思ったし、こういう作品を聴きたかったのだと改めて思った。

サウンド面に着目すると、シューゲイザー/オルタナ直系といった感じで、人によってはきのこ帝国を思い出す人もいると思う。(女性ボーカルだし)

彼女達と比べるとスリーピースということもあってか、よりシンプルな曲展開であったりサウンドの重ね方となっている印象。

あとは歌詞か。「若者たちへ」というタイトルだけど、「若者」はもちろん「大人」になってしまった人にも刺さるフレーズが散りばめられている。

「ドラマ」や「絵日記」の冒頭のフレーズなんかは、聴いた瞬間「身に覚えがあるな・・・」ってなり、過去を思い出してしまう。この感じだと、「若者たち」より「大人たち」の方が刺さってる気がしないでもない。

いつかライブで観てみたいな。ライブだと印象が変わるって、Twitterで見かけたし。

ライブで観る日を待ち望みながら、残り少なくなった2018年の夏をこのアルバムを聴きながら過ごしていきます。

全曲感想

1.エンディング

いわゆる静と動。サビでファズを踏んでかき鳴らされるギターは、シューゲイザー然としている。

多少、ノイズが混じっても気にしないような轟音ギターがこの曲の持つ「行き場のない感情」を表現している様な気が。

ボーカルの歌声も良いです。とても儚い歌声(特に裏声)で曲の雰囲気にマッチしてる。

アルバム1曲目に「エンディング」と名付けてしまうセンスが若くて良いなと。

「何かの始まりは終わりの始まりでもある」的な感じなんだろうか、いずれにしても最初の曲にしては閉塞感がある歌詞。

ラストの「望むよ」は、祈りに近いような歌い方と相まってドキッとした。

2.天国

「エンディング」の次は「天国」ときますか、完全に死の雰囲気を感じますがどうでしょう・・・。

しかし、こういう可愛らしい歌い方も出来るのか。

遊び心を感じる歌詞なんかは、Syrup16gの五十嵐隆を思い出したり。

間奏で電話の呼び出し音が鳴るんだけど、初めて聴いたときちょっとビックリした。心臓に悪い。

「天国」の人と会話(あるいは電話)するような歌詞だけど、「それじゃ大差ないね」と言っちゃうのが良いな。

「天国 or 地獄」って感じで、「天国=良いところ、地獄=悪いところ」みたいに語られがちだけど、その良いところと地上も負けてないと言ってのける。

いまを生きている人達に対する肯定ですね、素晴らしい。

3.絵日記

イントロが緊張感あって、かっこいい。

中盤から後半にかけての早口ボーカルパートから、ゆったりした演奏は面白いなと。

歌詞としては「夏の日の後悔」って感じですか、「絵日記」は夏休みの宿題を思いだしますね。懐かしい。

アイスクリームは溶ける
少年は空を指差す
あの雲は近づけば消えてしまうね

「絵日記」

「アイスクリーム」、「あの雲」、不可逆なものを描きながら、かつての日々に対する後悔を歌う。

浮かれた夏を歌うバンドではないと信じていたけど、ちゃんとこういう夏を描いてくれたので安心しました。

4.夏のよう

何度も繰り返される手癖っぽいギターフレーズが印象的なスローナンバー。

この曲も前曲に続いて「夏」を題材にしている。

「魔物たちの歩く」っていうフレーズと夏が結びつかないのだけど、「夏の甲子園には魔物が住んでいる」とかよく言うしおかしくはないのか。

歌詞のノスタルジックな感じは、一時期のフジファブリックなんかを思い出した。

5.ドラマ

冒頭のワンフレーズで心掴まれてしまう。

青春時代が終われば
私たち、生きてる意味がないわ

「ドラマ」

大人になることへの不安を根拠に、こんな風に思っていたことが自分にもあるような。

大人になってしまった現在からすると、別にそんなこと無いし、むしろ「生きてることに意味なんて必要無いのでは?」みたいな悟りまで開いてくるけど、「若さ」っていうある種絶対的なものを失う恐怖は分かる気がする。

青春時代は「ドラマ」だったのかな、そんな気はしないけど今と比較したら「ドラマ」だったのかな・・・。

そんなことを考えさせてしまう名曲。心が揺さぶられる。

6.RED

塩塚モエカの時に切なく、時に情念たっぷりのボーカルに圧倒される。

スローだけど力強い、地に足付いた強さを感じる楽曲。

「幸せも怖い」っていう歌詞は、Syrup16gの名曲「夢」のフレーズ「本気でいらないんだ 幸せはヤバいんだ」を思い出させる。

7.Step

イントロのギターフレーズから名曲のフィーリングがする。そして、予想通り名曲だった。

歌詞、メロディ、サウンド、どこを切り取っても羊文学といった感じの曲。代表曲になっていくんじゃないだろうか。

1番サビ終わりで入ってくる轟音ギターを聴くと、本当にシューゲイザーが好きなんだなと感じる。

「Step」のタイトル通り、一つ階段を上るその瞬間を切り取った歌詞。ここでいう階段は「若者→大人」、「過去→未来」といったものになる。

「優しくなりたい」し「幸せも知りたい」けど、「すこしくらいは」と遠慮がちな補足を付けるところに、好感をもってしまうな。

8.コーリング

イントロなんかは、どこかで聴いたことのあるような疾走系ギターロックの雰囲気を感じるけど、ドラムのリズムは凝ってて良い感じ。

「この拍手」や「あの日話した公園」と、「消えた/無くなった」ものに思いを馳せつつ、「もう決めた」と覚悟を持って前進する歌詞。

前曲「Step」に続き、控えめながらも前向きな曲となった。

9.涙の行方

展開に工夫が見えるロックバラード。ラストのギターソロはちょっと拙いけど必死さが音源からでも伝わる。

「絵日記」でも歌っているように、「過去への後悔」はこのバンドのテーマの一つだと思う。
そんな過去に流した「涙」も自分(あなた)を構成する要素ですよと。

優しいバンドだ。ちょっと達観し過ぎな気もするけど。

10.若者たち

8分におよぶ力作。若者だからこそ作れる曲、年を取ってしまったらこういう曲は作れなくなると思う。

僕らはいつでも難しいこと
ばかり考えてはダメになる
たまにはお酒やふざけた歌で
笑うくらいは余裕があったらなあ

「若者たち」

「余裕」・・・か。そういうに「若者たち」からは見えるのかもしれないし、自分もかつてはそう思っていたような。

「余裕」というか、もう無意識の防衛本能みたいな。本心とは違うけど、現実をしのぐための。

こういう感性が残ってて羨ましく思うし、残し続けてほしいけど難しいんだよな。これが。

11.天気予報

キラキラしたギターフレーズは初期のスーパーカーを思い出した。今作の中でも、かなりポップな曲に仕上がっている。

「嬉しいときも~」のくだりは、まさに「若者たちへ」って歌詞だ。

「覚悟はできてるかい?」なんて言ってるけど、多分本人達も恐怖半分って感じだと思う。

「私たちは覚悟をなんとか決めたけど、君たちは?」みたいな同世代に対する問いかけでもあり、お誘いのような。

サビの歌詞の文末は「?」で統一してる。そりゃそうだよね、先のことなんて分かんないし。ほんと、正直なバンドだ。

スポンサーリンク
レクタングル広告大
レクタングル広告大

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする