ASIAN KUNG-FU GENERATION「ワールド ワールド ワールド」

ワールド ワールド ワールドのジャケット写真
ASIAN KUNG-FU GENERATION「ワールド ワールド ワールド」(2008)

2008年3月5日発売、4枚目のフルアルバム。

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感想

リアルタイムで聴いた彼ら初めてのアルバムということで、個人的に思い入れが強い作品。

世界初のコンセプトアルバムと言われているThe Beatlesの「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」みたいな作品を作りたかったらしく、「夜が暮れて朝になる」のを描いたコンセプトアルバムになっている。

最終的に「朝になる」ことからもわかるように、前作「ファンクラブ」と比較すると明るい作風になった。

今作に関するインタビューを読むと、「ファンクラブ」が伝わりきらなかったもどかしさがメンバーにあったとのこと。

で、伝える上で足りなかったモノが何かを考えたときに「ユーモアとポップネス」なんじゃないかという結論に行き着き、出来たのが今作。

その発言通り、「ファンクラブ」で培った演奏技術を下地に、明るくポップな楽曲を多く鳴らしている。

曲自体は明るいものが多いけど、歌詞を意識して聴くと彼ららしい繊細さを今まで以上に感じる。

今作の鍵になる曲として「転がる岩、君に朝が降る」があるけど、この曲の中で下記のように歌う。

君の孤独も全て暴き出す朝だ

「転がる岩、君に朝が降る」

「朝」という、多くの人が晴れやかなイメージを持つ言葉に対し、上記のようなフレーズを当てる。

「光を浴びれば暴かれる、光があるからこそ影ができる」という希望と現実のバランス感覚。

こういう繊細さは昔から変わらないし、ここに自分はグッとくる。

あと、今作の特徴として、明るい曲ほど皮肉(あるいは批評)的な視線の歌詞が多いことに気づく。

後述の「No.9」の感想にも書いたんだけど、この試み自体が彼らからのメッセージなんだと思う。

「悲しみに悲しみをぶつけても解決しないよ」的な。「ファンクラブ」という内省的な作品を経た上で、彼らが出した答えなんじゃないかと。

ロックバンドとして、どう在りたいかを明確に提示したアルバムだと思う。

世界を変えることは難しいけど、それでも歌っていく。

これだけ書くと安易な結論に聞こえるかもしれないけど、過去の作品で積み上げてきた繊細な言葉があるので、自分は説得力があると思った。

最高傑作と評しても良い作品ではないだろうか。個人的には後に発売される「マジックディスク」と双璧。(その次に「君繋ファイブエム」)

全曲感想

1.ワールド ワールド ワールド

ふわっとした言葉なので多用したくはないけど「祝祭感」を感じさせるギターフレーズから始まる。

陰鬱なギターフレーズで始まった「ファンクラブ」とは対照的。

アルバム幕開けのファンファーレが鳴っているという表現がピッタリかと。

仕掛けとしては、前作「ファンクラブ」の最後の曲「タイトロープ」が”E”のコードで終わったのを受け、この曲は”E”のコードで始めているところ。

「ファンクラブ」と「ワールド ワールド ワールド」というアルバムが対になるアルバムだということがわかる。

2.アフターダーク

今作は「日が暮れて朝になる」ということを描いたコンセプトアルバム、ということで「日暮れ」の曲。

彼らのパブリックイメージに近い疾走系楽曲。イントロにはお得意のオクターブ奏法を用いたギターフレーズが用いられている。

歌詞も実に彼ららしい。現実と希望の狭間で揺れ、最後に希望への渇望を見せる。

その「希望」もあくまで「淡い」ものだと歌ってしまうのが、彼らの誠実さというのは変わらない。

最後に「進め」と力強く宣言しているところは、前作からの大きな変化ではあると思う。

3.旅立つ君へ

過去のアジカンの楽曲では用いてこなかったリズムパターン(2ビート)が印象的。

アウトロが次曲「ネオテニー」と繋がっている。

歌詞はというと、自分は「ブラックアウト」とのリンクを感じた。
(ともにアルバムの3曲目ということも共通点。)

「黒い重油に塗れたような世界」ってフレーズは「ブラックアウト」した世界なのではと。

で、そんな世界(具体的には仮想世界、インターネット?)から飛び出そうって感じだろうか。

いずれにしても「ワールド ワールド ワールド」というアルバムの世界観をよく表わした曲だと思った。

4.ネオテニー

前曲「ネオテニー」のアウトロから繋がって始まる。

ちなみにこの曲が出来たとき「すげえシングルができたと思った」らしい。
(スタッフには「何を言っているのか?」という顔をされたそうだ)

韻を踏んだフレーズが耳に残るので軽快な曲という感じもするが、歌詞を読むと考えさせられる曲でもある。

本人いわく「広島のことを思って作った曲」とのことで、あの過去の悲劇を繰り返さないようにということだろう。

かつて甚大な被害をもたらした「ジェット機」がいまだに沖縄の空では飛んでいて、いざとなればそれらに守ってもらわなければいけないという皮肉(アイロニー)。

ちなみに「ネオテニー」=「幼態成熟」。成熟した個体でありながら未成熟な、つまり幼生や幼体の性質が残る現象のこと。そのまま、現在の日本のことではと考えてしまった。

5.トラベログ

軽快なパワーポップ、起伏のあるメロディが耳に残る。

特に「君の想像を超える~僕は探すよ」のメロディが好き、「”君の”、”想像を”、”超える”」は語尾で上昇を辿るのに、「”情熱を”」は下降メロディ。

「”情熱”なのに下降するんかい」みたいな裏切りが良いですね。

虚構(インターネット?)と現実世界(実際に足を運んで見た景色)の対比をみせる歌詞。

「ブラックアウト」で「鈍る皮膚感覚」と歌っていたが、皮膚感覚を含む「感覚」というものを取り戻す旅が歌われている。(トラベログ=旅行記)

「嗅覚」、「聴覚」や「手触りのない=触覚」、「角膜の奥=視覚」といったフレーズが使われていることも特徴的。

6.No.9

四つ打ちのリズムに乗せて、軽快なギターリフが繰り出されるダンスナンバー。

これだけ書くと「なんて能天気な歌なんだ」と思われるかもしれないけど、歌の内容は反戦に対する思いが明確に込められている。

かなり直接的で分かりやすい歌詞だと思う、彼ららしくないと言ってもいい。

こういうポップな曲に、この歌詞を付けるっていうのが彼らなりのメッセージなのかなと。

「悲しみに悲しみをぶつけても解決しないよ」的な。完全な私見ですけれども。

7.ナイトダイビング

静と動、「サイレン」などの楽曲でも見せてきた彼らの一面を上手くパワーポップに落とし込んだ楽曲だと思った。

今作のアルバム曲の中では一番好きかもしれない、夜のドライブ中に聴きたいですね。

果てしない夜の高速道路で運転する感じと、感情の揺れ動きをリンクさせた歌詞。

「ファンクラブ」の楽曲で歌ってきた内省的な楽曲に近いものを感じた。

今作のコンセプト的には、日が暮れて、ついに真夜中になったという感じですかね。

8.ライカ

曲のタイプとしては「No.9」に似ている曲だと思う、曲調が似ているというのではなく、明るい曲に強いメッセージが乗っかるという点が。

動物史上初めて宇宙に行った犬「ライカ」をモチーフとした歌詞。
「迷い犬 デッドエンド」というフレーズで始まるのが凄い。

というのも、「最初からデッドエンドが決定していた」という「ライカ」の物語を一発で説明したから。

詳しく知りたい方は「ライカ 宇宙犬」と検索して、ヒットする記事を読んでみてはいかがでしょうか。

9.惑星

ギターリフが格好いい曲ですね、しかし喜多建介というギタリストはもっと評価するべきだと思いました。

耳に残るギターリフをさりげなく産み出しているギタリスト。誰でも思いつきそうなフレーズなんだけど、思いつかない。それが凄いと思うんだけどな。

わかりやすい応援歌にみせかけて、この曲も一筋縄ではいかないフレーズがある。

揺らめく旗の星に
数えて五十二番目に
本当は誰の言いなり
気付かれぬように空を奪う
連れたって並ぶように見えるのはまやかし

「惑星」

この一連のブロックが曲の中で存在感を放っている。

「揺らめく旗の星」が星条旗だというのは分かる。だけど「五十二番目」というのが難しい。

星条旗の星の数は現在50個(アメリカの州の数)である。なぜに五十二なのか?

少し調べてみると、既に51星の星条旗は作られているとのこと。
(詳しくは「アメリカ合衆国51番目の州」で検索してみてください)

で、このことと「ネオテニー」で歌っていることを考えると「五十二番目」=「日本」と考えることはできる。
(つまりは、日本とアメリカは同盟を結んでいても対等じゃないよってこと)

ただ色々と検索してみると、この五十二番目を「月」だと捉えている方もいらっしゃって、それも中々興味深い。

いずれにしてもこうやって考えさせられる歌詞を書くのは上手いなと感じる。

10.転がる岩、君に朝が降る

ライブでも大事な場面で演奏されることが多いシングル曲。

丁寧に紡いでいく言葉、サビで溢れ出る感情。実にアジカンらしい名曲だと思う。

「転がる岩=ロックンロール」ということで、後藤正文の「ロックンロール観」が滲み出た曲だなと。

「出来れば」、「大逸れたことじゃない」と冒頭から歌う。かつて「ループ&ループ」で「弱い魔法」と歌っていたように、彼は音楽が万能ではないことを知っている。

それでも「歌い続けていけば、何かが変わるんじゃないかという希望」は捨てない、例え厳しい現実(凍てつく地面)だとしても。

現実を直視する姿勢とささやかな希望、彼らの魅力が凝縮された楽曲だと思います。

11.ワールド ワールド

ボーカル後藤による弾き語り、インタールード。

「カチッ、カチッ」と鳴るメトロノームはまるで時計の秒針のよう。

アウトロで街の雑踏が聞こえ、次曲「或る街の群青」へと繋がっていく。

ラストの「Everything must lead to a new world」のフレーズは、今作最後の曲「新しい世界」とリンクしている。

今作はラストの「新しい世界」を鳴らすためにあると、インタビューで語っていたが、まさにそういうフレーズ。

12.或る街の群青

映画「鉄コン筋クリート」主題歌として書き下ろされたシングル曲。

「ファンクラブ」以降のセッションで曲を作ってきた成果が発揮された名曲だと思う。

曲展開も凝ってるし、従来のアジカンらしさもあって、個人的にも好きな曲です。

アルバムの流れからいうと、朝の光に照らされる街並みといったイメージ。

映画「鉄コン筋クリート」は観ていないので、細かい歌詞言及はできないけど、らしいフレーズが随所に散りばめられてるなと思った。

「”僅かな”白さ」とか「”助走もつけずに”思い切って飛び乗る」といった繊細な言葉選び。

13.新しい世界

この曲を鳴らすために、これまでの曲があったという感じがするほどフィナーレにふさわしい曲。

「ロックンロールの衝動」により、歌詞通り自意識の片隅から飛び出す。捉えようによっては、過去の彼らとの決別を宣言しているという考え方も出来る。

アルバムタイトル「ワールド ワールド ワールド」ということで、この曲の最後では「世界」を3回繰り返す。

そして、”E”のコードを一発掻き鳴らして締める。
(“E”で始まり、”E”で終わる。ちなみに、”E”のコードで終わるというのはThe Beatles「A Day in the Life」のオマージュ。)

ふわっとした言葉なので、多用したくはないけど「エモ」を撒き散らして終わるという表現がピッタリじゃないですかね。

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