ASIAN KUNG-FU GENERATION

ASIAN KUNG-FU GENERATION 「Wonder Future」

投稿日:2015年5月31日 更新日:


ASIAN KUNG-FU GENERATION 「Wonder Future」(2015)

~未来を彼らの音と共に~

2015年は若いバンドの台等により、バンドシーンが盛り上がりを見せている。
そんな中、かつてシーンを作り出した4人組はこのような答えを出した。
「いい音を、いい環境で録る」
ASIAN KUNG-FU GENERATION という4人組しか出せない音を追及して。
何年たっても、古く感じない王道ロックがここにある。

泥臭いギターリフで始まるシングル曲「Easter/復活祭」
Bメロを排除していきなりサビにいくという、彼らの楽曲では近年稀に見る疾走感。

「何したっていいんだぜ 無視したっていいんだぜ」

ぶっきらぼうに歌うボーカルだが、そっと背中を押してくれるメッセージ性。

ジョン・レノンの「イマジン」をイメージして書かれた、「Little Lennon/小さなレノン」
「遥か彼方」とファンには嬉しい歌詞も。さらに下記のような、シーンに投げかけるような歌詞もある。

「五月蠅いんだよ 黙ってろよ お前」

何やっても外野はとやかく言う。自分のやりたいことやらせろよ。

曲名通り、勝ち負けとは何だと問いかける「Winner and Loser/勝者と敗者」
8ビートの軽快なリズムに乗せて、メッセージ性の強い歌詞が印象的。
間奏前には、最近の楽曲では聞けなかった後藤さんのシャウトもある。エモい。

capitalism(資本主義)について歌った、「Caterpillar/芋虫」

「個性なんて必要ないさ 家畜のように飼い慣らす」

日本の企業勤めの人なら分かると思うんだけど、自分が居なくなっても変わりなんていくらでもいるんだよね。
そうなると個性のない従順な家畜を企業は求めるわけで。お金が貰えるだけましなんですかね?

アジカンらしいオクターブ奏法を使用した、エモ―ショナルなミディアムチューン「Eternal Sunshine/永遠の陽光」

「出会った喜びも亡くした悲しみも 月日が流してしまったんだよ」

冒頭4曲が批評性を帯びたメッセージ性のある楽曲だからか、ふと聞こえるこのような歌詞が胸に響く。

名曲「未来の欠片」を思い起こさせるイントロから、勢いで突っ走る「Planet of the Apes/猿の惑星」
「猿の惑星/創世記(ジェネシス)」からインスパイアされた楽曲とのこと。
アレンジで潰したボーカルが、全体に漂うダークさを作り上げている。

カメラのCMに起用され話題となった「Standard/スタンダード」
再録音され、音が太くなりパワフルな楽曲になった。

アルバムタイトルにもなっている「Wonder Future/ワンダーフューチャー」
今作屈指の泣きメロが美しいミディアムチューン。

「霧の先にどんな未来が待っていたって もう漕ぎだしてしまったんだな」

これからどんな未来が待っているか分からない。不安だ、押しつぶされそうだ。
でも、受け入れるしかない。生きている以上、嫌でも前に進まなければいけないのだから。

美術館をテーマにして作られた「Prisoner in a Frame/額の中の囚人」
一瞬、音を切る間奏に工夫が凝らされている。
全体的にはダークだが、サビは開放感が溢れる。

ブリッジミュートを用いた疾走感溢れるギターリフが格好いい「Signal on the Street/街頭のシグナル」
サビの伊佐知さんのドラムが楽曲全体の勢いを助長させる。

ラストを飾るのは、ポップながらも複雑な展開が彼ららしい「Opera Glasses/オペラグラス」
Cメロ(三回目のカーテンコール~)の幸福感がツボ。

「不安で押しつぶされそうになったら思い出してよ 埃を被ったオーディオ」

嫌なことがあったりしたら、このアルバムを再び手に取り聴くだろう。未来に想いを抱きながら。

聴いていただければ分かると思うが、このアルバムは楽器の一音一音が太い。
これは、Foo FightersのプライベートスタジオのStudio 606で録ったのが影響している。
ギブソンのレスポールの音があまりにも太く、レコーディング環境でこんなにも違うのかと驚いた。
確かにこんな音を出せるなら、ロックな作品を作りたいと思うのは当然かもしれない。

最近の楽曲では、ストリングスを使用しているものもあったが、今作は4人で出せる音に限定している。
そのせいか、若々しく力強いサウンドになっていて、初期の彼らが好きな方にはおすすめ。
だが、後藤さんも言っているように、このアルバムは1stアルバムをもう一度作ろうとしたものではない。
キャリアを経て、成長した彼らが今の時代背景にあった音と歌詞を詰め込んだ作品である。

このアルバムは普遍的だ。流行に流されることなく長く愛されることになるだろう。
「”Simple” is “best”」このような表現があるが、まさにそんな作品。
一度シーンを作り上げた4人組が、このような王道ロックを鳴らしたことの重要性を私たちは後に知ることになる。
未来の子供たちに、日本のロックはカッコいんだよと伝えるのに最適な教科書的傑作。

1. Easter/復活祭


2. Little Lennon/小さなレノン
3. Winner and Loser/勝者と敗者
4. Caterpillar/芋虫
5. Eternal Sunshine/永遠の陽光
6. Planet of the Apes/猿の惑星

7. Standard/スタンダード

8. Wonder Future/ワンダーフューチャー
9. Prisoner in a Frame/額の中の囚人
10. Signal on the Street/街頭のシグナル
11. Opera Glasses/オペラグラス

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著者:S.S
1990年生まれ。愛知県出身。

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