赤い公園

赤い公園「熱唱サマー」

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赤い公園「熱唱サマー」(2017)

約1年半ぶりとなる4枚目のフルアルバム。ボーカル佐藤千明脱退前、最後のアルバムの感想。

赤い公園に対する最初のイメージは、「シンプルじゃない」バンドというものだった。
曲のある部分を切り取れば、とんでもなくポップな箇所もあるのだけれども、全体で聴くとよく分からない。でも良い。

そんな彼女達の印象が変わったのは、2ndフル「猛烈リトミック」。外部プロデューサーを取り入れたこの作品は、彼女たちの魅力そのままに上手にポップソングとして商品化に成功した快作だった。
その後は、徐々により聴きやすい音楽にシフトしつつも、初期の彼女達が持っていた複雑さも忘れずに独自な路線を進んで行く。
そんな矢先に飛び込んできた、「ボーカル佐藤千明脱退」のニュース。とても驚いた。まさか、ボーカルが脱退するとは・・・。

この「熱唱サマー」というアルバムは、ボーカル佐藤千明の脱退が決まった上で作られた作品とのこと。
バンド好きであれば誰もが「メンバー脱退=悲観的なこと」として捉えるだろう。私もそうだ。だから、このアルバムは「内省的な作品になっているのかな」なんて思っていた。

予想は良い意味で裏切られる。
彼女達が選んだのは、「いま、この四人で鳴らせる音楽を精一杯やりきる」という道。
過去最高に清々しいポップアルバム。赤い公園の佐藤千明としての、最後の熱唱を耳に刻め。

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楽曲の話

いきなり飛び込んでくる「カメレオン」のしつこいぐらいに繰り返されるギターリフ。普通は繰り返しすぎると飽きるので、フレーズを少し変えたりするものだが、曲全編を通して基本的には変わらない。「これでもか!」というぐらい繰り返してくる。妙に軽快で、こっちが「参った」という気持ちになる。
この曲の繰り返される妙なギターリフのように、今作はサウンドの面で色々な挑戦をしている。

その一つに、四人で鳴らせる音以外の外部の音も積極的に使っている。
先ほど紹介した「カメレオン」なら、トランペットを代表するブラスサウンドが使われているし、「AUN」、「最後の花」では打ち込みのデジタルなサウンドが目立つ。
シングル「恋と嘘」のキラキラしたシンセの音なんか、ちょっと眩しいぐらい。アイドルが歌っていても、なんら違和感はない。
こんな感じで、各楽曲に様々な音が鳴っていて聴くたびに色々な発見がある。過剰なアレンジをしていると感じるかもしれないが、私としては聴いていくと不思議と必要性を感じる音ばかりだった。
ここら辺の楽曲プロデュース能力は、彼女達が培ってきた技術がすごく垣間見える。

曲調も様々で、「闇夜に提灯」、「ほら」のように疾走感溢れるギターロックという曲もあれば、「ジョーカー」、「セミロング」のような軽やかなポップソング。「BEAR」みたいに子供番組で流せそうな優しい曲もあれば、「journey」、「勇敢なこども」は壮大で力強さを感じる曲もある。
どの曲もタイプは違うが、アルバムタイトル「熱唱サマー」というだけあって暑い夏に負けないぐらいの力強いエネルギーを感じる曲ばかり。
3~4分台でまとめられた短めの曲達に、彼女達の魅力がそのまま凝縮されている。

全体を聴いて思ったのは、「佐藤千明のボーカル、やはり必要だな」ということ。
様々なジャンルの音楽を鳴らす彼女達にとって、ときに力強く、ときにキュートという風に曲に合わせて歌い分ける力の高い佐藤の歌は不可欠だ。
改めて脱退は残念だなと思うと同時に、残った3人がどうするかについては気になるところ。

歌詞の話

作詞を担当するのはギター津野米咲。今作で彼女が書く詞は、とても「女の子」っぽい。
(10曲目「ほら」については、後藤麻由という人が作詞している。津野が高校時代組んでいたバンドのメンバーである。この曲については後述。)

大半の曲は女性目線での恋愛の後悔だとか、迷いだとかを歌った曲になっている。
阿吽の呼吸で相性ばっちしだった彼と別れてしまった後悔を歌った「AUN」。

「最後の花になりたくて (最後の花)」

と切実に歌い上げる重めな「最後の花」。

恋愛夏ドラマのようなシーンが思い浮かぶ「プラチナ」に、自分の相手を好きだと思う気持ちに相手は気付かずに告白してくれるのを待つ「恋と嘘」、別れたあと中途半端な長さに切った髪に未練あるんじゃないの的な「セミロング」と連発される恋愛ソング。それも大体上手くいかなさそうな感じ。
男からすると若干引いてしまう部分もあるんだけど、女性からすると共感する部分はあるかもしれない。

本題はここからで、まずは面白いと思ったのが「カメレオン」と「ジョーカー」の関係性。

「あんたをいくらでもくれてやれ (カメレオン)」

カメレオンは周りに合わせて染まっていくことを肯定している曲。
また、「ジョーカー」はババ抜きのジョーカーの気持ちを考えた歌。

「いつから違うカードのふりして じっと息をひそめ過ごして (ジョーカー)」

見方は違えど、影を潜めて生きている存在である「カメレオン」と「ジョーカー」を歌ったのは面白いなと。

そして、「別れを感じさせる」メッセージ。「journey」と「勇敢なこども」、ラスト2曲はともに「旅」がテーマの曲。
力強く前を向いて進めというメッセージを感じる「journey」は佐藤千明に送ったような歌に聞こえてしまうし、「勇敢なこども」って誰なのと言ったら、赤い公園のメンバーそれぞれのことだと思えてしまう。
どちらの曲も「旅の途中」を歌っている。どんな道に進んだとしても、それが「正解」じゃなかったとしても、前に進むしかないんだ。
決意に満ちた2曲で締めた今作は、やはり「この4人で作る音楽は最後なんだな」と感じてしまう。

最後に「ほら」という楽曲について。この曲は、高校時代の津野米咲が組んでいた別のバンドで作った曲で、後に津野が加入し赤い公園がカバーした楽曲。

「これから走り出す道 まだまだ行ける気がする (ほら)」

シンプルなアレンジで、初期衝動をそのまま表現したような楽曲。高校時代から歌ってきた、思い入れのあるこの曲をこのタイミングで入れてきたことも今作が持つ意味合いを強めている。

感傷は置いといて

とにかくこの作品に、悲しさだとか寂しさだとかっていう気持ちは似合わない。
難しいことは考えずに、「赤い公園って良いバンドだな」と感じてくれるならそれが一番だと思う。
才能に溢れた4人が作り出した、ポップでロックでとにかくエネルギッシュな作品。

今後の4人にどんな未来が待ち受けているかは分からないけど、音楽を通してじゃなかったとしても、もう一度4人で何かをやってほしい。
ただ、欲を言えば佐藤千明には今後も歌い続けてほしい。

1.カメレオン
2.闇夜に提灯


3.AUN
4.最後の花
5.ジョーカー
6.プラチナ
7.恋と嘘

8.セミロング
9.BEAR
10.ほら
11.journey

12.勇敢なこども

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著者:S.S
1990年生まれ。愛知県出身。

邦楽アルバムの感想とコラム記事を中心に書き殴っていきます。
特にロキノン系といわれるジャンルを好んで聴く。

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